(仮)の世界。
絵を描いてたり日常の愚痴を綴ったり諸々。
タイトルどおりです。
ニトロプラスから発売された、「沙耶の唄」
ニトロプラスだから無論エロゲです。
エロゲです。
でも正直に言っていい?
…此れでヌけた人は頭大丈夫…?
(かなり全力で失礼。)
まぁ、女だからなんつうか信じられねぇよママン、此れエロゲなのかよって思ったんですけどね…。
まぁ、そういう趣味の人もいるし、普通にヒロイン可愛い…し…ね…。
純愛で有名ですが、それはわかる気がします。
追記にネタバレあり、つうかばっか。
あと腐ってる女子なので少々注意。
…こんな純愛ゲームに腐を混ぜんなよ…。
「――そういえば、名前を教えてなかった気がするよ、こんなに話し込んだのにね。」
お互いテーブルを挟んで座り込みながら向かい合い、警備員さんも俺も大体食べ終わって、談笑をしている中で突然漏らした言葉。甘い香りと出前のラーメンの香り(警備員さんの飯)と、辛い匂い(カラムーチョ、実はさっき傍のコンビニまで警備員さんと抜け出して買いに行きました、裏口誰も見張ってないこの学校の警備が心配です。)で満たされた空気の中でのふとした言葉。
…そういや名前教えてないなぁ。
こんなに意気投合して、
ハゲ数学教師の秘密。(ズラが一週間でどんなものを被るか決めてます。だから皆にバレバレです。)
体育教師の秘密。(スポーツ雑誌の棚にエロ(SM)本を挟んでます、体育系部員がこっそり見に来てます。)
購買のおばちゃんの秘密。(昔SM嬢。)
…とかイロイロ話してんのに。
―――秘密だと云うのにその内の二つはバレバレなのは何故なんだい。
って警備員さんに言われたので、
確かにそうだよな――…。とか思ってたらさっきの言葉が出たんだよな。
警備員さんはゆっくりと帽子を取り、少し頭を垂れた。
帽子の下にはふさふさした髪の毛が確かに生えている。(ハゲ教師を思い出したからこう思ってしまった。)
「…僕の名前は藍沢 真一郎(あいざわ しんいちろう)だよ、…まぁ、しがない派遣警備員です。」
帽子を取ると陰指した顔色が消え、…結構若々しいので少し驚いた。
少し茶髪交じりの黒髪に、――あ、目が少し青い!
「クォーターなんだよ、僕。」
「すっげ!外人と!?パツキンと!?そしてクォーターって何。」
「えっと、パツキンかは忘れたけど…、クォーターってのは、祖母か祖父が外国の人間を持つ三世代目のことかなぁ…、あはは。」
「へぇー…。」
じろじろじろ、
無遠慮に目玉を覗き込みながら相槌を打つ。
困った様に真一郎さんは身を引きながらもあははと微笑み続け。
警備員室。
なんかミルクたっぷりのコーヒーを呑ませて頂いてた。
「…えっと、どうも。(なんで牛乳沢山入ってんだよ。俺ブラック大好きだよ?)」
俺を引き止めたのは、さっき擦れ違った警備員さんだった。片手で俺の肩を握り締め、
俺が振り向けば小さく首を横に振っていた。
「止めなさい。君一人で止めに入っても無駄だ。」
「そんなの、」
分からないじゃないか。
見ず知らずの警備員に諫められた事が、俺の中で静かに怒りを沸き起させた。
何でアンタなんかになんで忠告されなきゃならないんだよ!!
関係ないだろ!!
胸倉に掴みかかり、理不尽な怒りを彼にぶつけたい衝動に駆られる。
…そんな声が頭のなかに駆け巡りながらも、同時にさっきまで俺の中を占領していたもう
一人の俺が囁く。
良かったな、止めに入ってくれた人がいて。
…これで自分の行動を正当化できた、
「いじめを止めようとしたが他人にとめられて出来ませんでした。」ってな!
―――違う違う俺はそんな言葉で弁解なんてしない!!
俺は意地になって曲り角から脱出しようと足を動かす。
(ああ、それでも警備員さんは放さない!)
「…よく彼等を見なさい。いじめをしているのは彼女達だけじゃないだろう?」
…まるで、いじめ阻止計画を立てていた俺の思想を読むような言葉だった。
「彼女達だけじゃない、あのクラスの見学者全員。それに彼女達には面白いから協力して
る男子だって居るんだよ。…そんな中ただ一人突っ走って止めようだなんて、」
そこで警備員さんは一旦言葉を区切り。
「新しい標的になりたいのかい。」
動き出そうとしていた足がもう動かなくなった。
目の前でクラスメイトの男子が彼のズボンを脱がしに掛かる。
俺は動かなかった。
彼はズボンを脱ぐまいと必死にベルトを押えた。
まるで魔法に掛かったみたいに足から感覚が消えた。(警備員さんの肩に掛かる力の感覚
が増える。)
皆が「脱げ!」と囃立てる。
警備員さんが「見るな。」と囁いた。(顔も身体も動かない。)
先生がその横を何事も無かったように通り過ぎた。
(苛める女子は遊びですと断言する。)
(センセイは苦笑い。)
(余り大きな声をだしてはしゃぐなよ、)
(そんな忠告だけで、)
(――俺の身体から力が抜け落ちる。)
数秒しか彼は自分のズボンを守れはしなかった。
男子生徒数人の手で、
ズルッ。
「うわっ!」
「キモい!!」
「臭いよー!」
「見ろよこいつブリーフ履いてやがんの!キモー!」
「つーかさぁ、触ったところが腐ってくよー!」
「いやー!ちょっとこっちにもってこないでよ!ズボン!」
「キーターナーイー!!!」
罵声、
罵声、
罵声、
罵声、
―――罵声の連続!
あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
警備員さんが俺を引き摺るように連れていってくれた(逃がしてくれた。)場所が、
警備員室だった。
牛乳と琥珀色した飲み物が完全に混ざりあう経過をじっくりと見つめ、
見捨てて逃げ出し警備員さんに縋りついていた時を思い出していた。
コーヒーはなかなか混ざらないな、
(まあ俺ブラックが好きだから、出してくれた警備員さんには悪いけど余り呑みたくない。)
なんて思いながらコーヒーを凝視してる様子を、
警備員さんはまだ落ち込んでいる、か、奇妙にでも思ったのかもしれない。
オンボロ(警備員室の中では綺麗な方)の椅子に座りこんでいる俺のソバまで近寄って、
静かに、ゆっくりとした口調で話し掛けてきた。
「――君は、正義感が強い子なんだね。」
俺のコーヒーへ無遠慮に角砂糖を加えながら。(コーヒーがどんどん汚されていく……。)
「普通は眼を背けるものなのに、君は立ち向かおうとしてた。」
角砂糖三個目。
「あの子は、友達だったのかな?」
「…いえ、知ってるだけ。」角砂糖四、五。(溶け切れずに浮いてる。)
「…なのにどうしてあんなに、君は苦しむ必要があったんだい。」
俺はようやく彼の顔を見る為に顔をあげた。
その時、俺は初めて警備員さんの顔を見た気がする。
声は大人の男だから当然低い声、
――でも少し爽やかな印象を与える声。
…顔は余り爽やかとは言えない不精髭が少々あり、
警備員の帽子を被っているからなのか、
顔に影が刺していて酷く陰気に見えた。
…何故か、俺を労る言葉は静かに、そして優しく聞こえた。
(俺の思い上がりかも知れないけど。)
「…思い出すから。」
だから思わずその言葉を俺は漏らしてしまった。硬く閉ざした記憶の扉、
「 。」
けして思い出すまいと決めたあの時最悪。
「 。」
―――――思い出すなもうむかしのはなしなんだからもうやめろどうしようもなかったんだ!!
あのときおれになにができたというんだ!!
白い部屋。
不思議な器具。
男。
―――妹。
「…何を思い出すんだい?」警備員さんの一言で現実に戻ってきた。
――すう、
身体から体温も戻ってくる感触がつかめる。
その時、自分が自分の手を握り締めている違和感に気づいた。
足下は俺の爪先から、
眼前に立つ警備員さんの足の爪先を満たす程の琥珀色の水溜まりが出来上がっていた。
琥珀の中に浮かぶ白い島、
つまりはさっきまで俺が握ってたカップのかけらを見て自分が何をしでかしたかに気付く。
「…すみません。」
先程の質問は確かに聞こえていた。
でも素直に(しかも赤の他人に)答えたい質問でもない、
いや考えたり思い出すのも放棄したい質問だったから、
聞こえなかった振りをして割れたコップの破片を拾うことに専念した。
そんな事を考えていた俺は無防備で、何をされても避ける事は難しかった、
―――けどあんな事をされるなんて思ってもなかったんだ。
頭に何かが乗る感触。
別に痛みが走る様な触り方じゃなかった。
撫でる感触が程なく伝わる。
単調な動きで、そしてなるべく髪の毛がくしゃくしゃにならない様に撫でられた。
久しぶりだった。
頭を撫でられるなんてことは。
…高校生なら久しぶりだなんて当然だけども、
俺は小学生の途中で撫でられる事は、ある事を境に全然無くなったから。
撫でられるだけじゃない。
褒められる事も、
抱き締められることも、
――いや、
それ以前に、会話も殆ど消えた、無くなった、コミュニケーションが皆無になってしまった。
親の私たちだけでなく、
――お前も、また責められるべき存在なのだと言う、親の無言のメッセージだろうか。
昼休み。 「俺パン買ってくるよ。」 「え?お前月子と食べないのかよ。」
仲間も一人が当然の様に告げる言葉、いや出来ません。つーか彼女の目の前で食事なんて出来るか!
そんなことしたら心臓が破裂してしまう!
「いや無理だって!!」
「誘えよ!」
皆が声をそろえて言う、出来ねぇもんは出来ねぇっての!
「朝の挽回をしろよ!」
「此だから童貞は。」
「だから関係無いだろ!!」
「「「(`ε´)」」」
「なんだよその顔!どう言う意味だコラ喧嘩なら買うぞぉ!!!??」
「五月蠅いよフォーティーズ!頼むから授業中以外の私達の憩いの時間帯くらい
大人しくしろ!!(女子)」 「あん?お前ら憩いの時間帯っても自分の彼氏への高き理想を長々語るだけだろうが!
だから彼氏出来ないんだよ!!このカービィ体型が!」
「なんですってー!」 …勝手に喧嘩を始めた隙にパンを買いに行った。 手には購買で勝ち取った戦利品(メープルメロンパン。人気No.1賞品。)を持って、
警備員さん(若い人、つっても老人だらけの警備員の中でという意味だけど。)と擦れ違い
ざまに挨拶を交わす、後は曲り角を曲がって俺の教室へ
「もう学校くんなって言ってんだろ!!」 何か、柔らかいモノを蹴る音が、した。足が竦んだ、曲り角を進む一歩手前で。 …女子の声だ。 「あー、マジキモい!こいつ蹴ったら足が汚れた!!」
「うわバッチー!ちかよんないでねー?」
「あとで靴洗うからさあ!!」
「洗っても取れるのその汚れ!?」 次に来るのは女子共の笑い声の合唱。
曲り角からそっとその奥を覗きこんだ先に見えたモノは、
蹲り動かない「男子生徒」と、きっとこいつらがいじめを先導してる女子共だ。
…いじめの対象を囲んでいる。
しかも俺のクラス前で(こいつらは俺のクラスメイトだから当然なのかもしれないが、
男子生徒は違うクラスだ。…女王と男子生徒は同じクラスだけど。)
やってるから俺は更に動き難い。…この光景を見ながらも無視して教室に入る勇気が無い。
「つーか麗美もよくこいつに手で触れるよね!私だったら出来ない出来ない!」
「でも「女王」さあ、此の前こいつの股間握り潰してたよ、カッコいー!」
「マジ!?駄目私には出来ないよ!!その後きちんと「女王」手を洗ったかな!?」 キャハハハハハハハハハハ! 正直、吐き気がした。 どうしようもないくらいの吐き気、一人の男子生徒が蹴られ、なじられ、罵られ。 先生は居ない、 他の男子生徒は助けない、 むしろ携帯で写真を取ってる奴も居た。 助けは無い、 さし延ばされる手も、 その光景を彩るのは、 女子の笑い声。 俺は何もしないのか。 一歩、一歩なんだ。 その一歩さえ踏み出して、俺が「やめろ!」て言えばいい。
いじめの主犯格は全員女子ばかりだ、
どうせしらけた顔して「何言ってんの」と言いながら再開するに違いないが、
その時は力付くで止めればいい。(コレでも力には自信がある)
…喧嘩騒ぎになれば先生も駆け付けてきて止めに入る。 頭ではそう思い描いてるのに身体は全く動きもしない。 手の平には冷汗が垂れてねとねとする。眼を逸らせもせず、曲り角から見つめ続けてた。 ……何も行動も起さずに 分かってるんだ、 なんで動かないのかくらい。 頭の中で誰かが、(いや、誰かじゃあ無い、俺自身だ!)
―――俺のさっき考えた計画を打ち消すように声を響かせる。 やめろって。 あんな奴助けてなんかあるのかよ。 助けても悪評が立つだけだ。 助けない方がいいんだよ、お前の人生にあんな奴関係無いだろ?(五月蠅い。) ほら見ろよあの惨めな姿! 無様に女の足下に転がってよ!!顔面蹴られて鼻血出してやがる!(五月蠅い。) それにお前だけじゃないさ、他の奴等なんかもっと薄情じゃないか。
…写メしてる奴が何言ってんのか分かってるか?
聞こえるんだろう?「良い構図だな。俺にも寄越せって、ネットの日記に張るからよ。」
とか言ってるのがよ!(黙れよ!) お前は悪くないさ。(五月蠅い!) 悪いのはあのいじめを先導してる奴等だろ?(そいつらも悪いさ!) ――――それにあんな害虫みたいな奴を庇ってなんか意味あんのか?
(五月蠅い黙れ黙れ黙れ黙れ!) (そう弁解したって、正当化したって、見てるだけの罪は変わりはしないんだよ!! あの時の様に…!) 忘れもしない、
あの日のことは。
『ごめんなぁ、りん、お父さん、「すず」を。』
泣く父親、
叫ぶ母親、
一歩、俺の足が踏み出し、 「止めなさい。」
た、気がした。 …気付いたら、誰かが俺の肩をしっかりと掴んでいたんだ。
―――…一体何が悪かったのですか。
―――其れは誰にもわかりません。
―――如何してこんな目にあわなければならないのですか。
―――其れも、誰にも解りません。
―――では貴方は何が解るのですか。
私に解る事と言えば、
ただ一つ。
もう、後戻りは出来ないことです。
―――――――
―――――――
朝。
其れは新しい日の始まりを感じるだろう。
昔の人はこの日の光が刺し、新たな時を歩むことについて如何思ったのか。
其れは実際俺には解らない、でも、
俺にとってこの日の光はある意味苦痛である。
なぜなら―――…。
「まーた、遅刻かよ。」
学校へ足を進めなくてはいけない運命と同時に、遅刻の罰則を受ける運命が決定しているからである。
現在時刻8:10
学校までの距離に掛かる時間・40分(チャリで)
到着せねばならぬ時間・8:25
あっはっはっは。
もう駄目だこりゃ。(完全に諦めモード)
つーか、何で俺は毎日毎日遅刻ギリギリに起きるんだろうなぁとベットの中(ふかふかで気持ち良くてあきらめモードを増幅させる。)に潜って携帯電話で時刻を確認しながら思った。
いや、いつもはもっと早い時刻に起きて、なんとか遅刻をギリギリでかわすんだが。(この奇跡をトモダチの中ではよく「モーゼの十戒みたいに信じられないね。」と云ってくれる、なんだその例えは、そしてモーゼって誰。)
まぁ、今日は無理だろ此れ、無理無理。
諦めて寝るか、
其れが一番いい。
其れに科学的にも、寝る子はよく育つって云うしね(ハート)
じゃ、
おやすみ――――……。
とんとん。
…。(現在俺の睡眠度レヴェルは30%)
とんとんとん。
……寝るから静かにしてくれよ、(レヴェル70%)
もう俺は寝るんだ、例え今外でノックをしているのが借金取り(借金無いけど)であろうが先生(遅刻常習者候補だから少し可能性はあるが。)であろうが、なんであろうが―――。
「―――凛くん?」
その声を聞いた瞬間、俺の中で興奮を促す脳内神経が爆発的に動き、俺を眠りに誘う為に身体を包み込んでいた鉄の様に重かった毛布がまるで羽毛の様に(羽毛布団だけど。)感じられ、俺は容易に片手一本で吹き飛ばすことが出来た、そして吹き飛ばした瞬間俺の視線の先に見える箪笥にベットから飛び蹴りを食らわせ箪笥の戸をぶち開ける。(バギィッ!と音を立てて、壊れてしまったがまぁ今は全然問題にならない、一ヶ月前に祖母に買ってもらったものだけどあんまり問題ない。)そして開けた(壊した)戸を投げ捨て箪笥の中に仕舞ってある衣服を取り出し素早い手つきで制服に着替え(え?寝巻きはどうした?そんなの俺の爆発的なオーラで既に吹っ飛んでるに決まってんだろ。)――――…。
とんとん?
「凛君、どうしたの?さっきすごい音が聞こえてきたけど。」
いや、問題ない!て叫ぼうとしたけど其の前に俺は口の中にモンダミン(歯磨きの出来ない日用)を含んでいて返事が出来なかったんだ。(だって口臭いのは男として如何だよ、煙草の匂いはハードボイルドな感じがして良いかもしれないけど俺は煙草吸わない。あとワンルームマンションの為直ぐ近くに台所がある、そして台所で歯を磨いています。)
「もしかしてオナラ?」
でけぇよ!!!
何でそういう思想に行くんだろうこの子はと常々思ってしまう。
「あ、大丈夫だよ、凛君、生理現象だもん。私解ってるから。」
全然解ってないのが悲しいよ。でもいいんだ、君にならわかってもらえるのは(違うけど)嬉しいからね!
「でも大変だね凛君、あんなに大きい音がするなら周囲の人に気遣うのは。」
いや違うんだけどね、
ていうかあんなデカイオナラは凄い威力で噴出しそうで俺のケツの危機じゃなかろうか。(確実に裂けてる。)
そしてモンダミンを吐き出し今日の朝食は学校で食べるとして昨日から既に用意していた荷物(といっても大体の勉強道具は此処には無い、皆学校である、そして学生の殆どはもって帰らないのである。)を持ち、よし、準備は完了――――!!!
扉に、いや、格好付けるなら(しなくていいんだけどな。)
彼女という天使の待つ、
HEVENs DOORのノブに手を掛けた―――……。
ごめん、格好付けて英語使った後って結構恥ずかしいな。
きぃぃ―――……。
「おはよう、凛君。」
其処に立っている彼女は、何時も俺に向けてくれる(いや、実はクラスメイト全員なんだけどね。)
天使の微笑で挨拶をした―――……。
月子、俺のクラスメイト。中学の時からの知り合いで、そして俺がひそかに淡い恋心を抱いている相手でもある――…。
「そういやさ、この時間帯に此処に居るってことは…月子ちゃんも遅刻なんじゃ…。」
「大丈夫よ凛君、凛君の奇跡なら間に合うものきっと。」
「いや其れをあてにしてるの月子ちゃん!?あんなフォーティーズ(此れはテストの点数平均40点の仲間で構成されたグループである。)の云ってる事無視していいのに!」
「え、だって奇跡があるから凛君、私との待ち合わせに遅れてたんでしょう?」
………。
~昨日の夜。~
「もしもし月子ちゃん?」
『あ、凛君如何したの?』
「いや、明日一緒に学校に行かないかなって、思って…。」
『本当?うん、解ったわ。明日何時に何処で待ち合わせ?』
「えーっと、七時には俺が迎えに行くよ!」
『本当?解ったわ、凛君明日遅刻しちゃだめだよ?』
「大丈夫大丈夫!俺には奇跡があるからさ―――…(ふっ。)」
『ふふ。』
~回想終了~
「………あ。」
「?」
―――俺、
最低男じゃねぇかぁぁぁあああああああ!!!!!!!!(忘れてた。)
学校、SHR終了後。
「「「ぶはははははははは!!」」」
「そんなに笑うことかよ!」
俺は拗ねた声でこのフォーティズ(つーか、俺もこの内の一人なんだよね。)に抗議する、俺は自分の椅子に座り込み、背もたれに全体重を掛ける。他のメンバーは何故か俺の机の上に座っていた。(三人。)
…そういや、俺のことを教えるの忘れてた。
俺の名前は笠木 凛(かさぎ りん)
雌みたいな名前だけど雄です、性欲あります、女の子大好きです。
なのにこの名前で雌に勘違いされます、男子生徒に雌扱いされてキレてそいつの頭皮を掴んで引きずり回したことはとても有名なお話です。(そしてフォーティーズの仲間の一人がその被害者です。)
…そして今親の都合(離婚とかいろいろの問題。)で一人暮らしさせられてます。
まぁ、苦痛じゃないんだけどな。
…誰の所為でもないし。
「だってよ、普通好きな女との約束忘れるか?俺なら無いね。」
「だから!寝る前にゲームしてて疲れたんだよ!」
「だからって忘れるもんかね!」
一人が呆れて肩を大げさに竦めて、声の溜息を出す。なんだよ、俺と同じ脳タリンの癖に彼女持ちめ!(あまり関係ない。)プレイボーイめ!性病掛かっちまえ。(呪っとく。)
「まず目覚めたときに気づくもんだよ、んなもん。」
んなことは解ってるんだが、と、呟けば誰かが笑いながらこう告げる。
「此れだから童貞は考えの斜め上を行くな。」
「だーかーら!俺だって如何してそんな大切なこと忘れたのか解らないんだよ…って誰だ!今俺が童貞云々関係ないだろ!?誰だ今云ったの!!」
「「「「さあ?」」」
こいつらは無駄なところで息がぴったりだ。先生の血管を(主に成績面で)ブチ切れさせる程に。
「まぁ兎に角お前の奇跡が起こって又遅刻ギリギリで間に合ったんだろ?」
「お前空でも飛んでるのかよ。」
「それともあのママチャリに仕掛けでもあんのか?」
「ロケットブースター?」
無い、そんなもんは無い!!
と否定した時に一時間目のチャイムが鳴った。一時間目は移動じゃないから俺もこいつらも移動はしない、しかし別のコースの奴ら(進路によって、A,B、C、Dに分断される、俺はD。このクラスが全員揃うのはSHRやLHRの時、あとは特別授業くらいで、普通授業はコースに分かれて授業を受ける。)は次々に教室から出て行った、……月子ちゃんは別クラスだ。(凄いしょんぼり、この時この瞬間俺は勉強を頑張ったほうが良かったと心底後悔する。俺のコースは主に専門、短大、其れか就職専門である、月子ちゃんは国立専門。)
「―――まだ、あいつ学校に来てるんだな。」
フォーティズの一人が呟いた。
その言葉に一斉、ある一人の男子生徒に顔を向けた。
顔を向けた方向に居るのは、まぁ、見た感じで「オタク」だって判断できる奴だ。筋肉とはかけ離れた、脂肪の沢山詰まってそうな腹、サイズが小さかったのかはち切れんばかりに伸びた制服、ギリギリで制服の前を止めるボタン。洗ってなさそうなオイリーな髪の毛。背が平均男子より少し低く、(俺も人のことは言えないが、)声もぼそぼそとしてて聞こえ難い……。
この、名前も知らない男子生徒は有名だ、
―――苛めを受けてるって点で。
「この前は、女子生徒に上履き隠されてたよな。」
「二日前ぐらいだろ其れ、上履きは女子トイレに捨ててあったらしいぜ。」
あの「男子生徒」に聞こえないように、俺たちはその「男子生徒」が教室の隅の方にある席に着席するのを見ていた。「男子生徒」の顔はよく見えない、ずるずると伸ばされた不潔な前髪で顔がよく見えないからだ。
「しかし、あーいう格好の奴が未だ高校生で居るとは思わなかったよ、俺も。」
「せめて髪洗えば苛めに受けるとかねぇんじゃね?」
「あー、駄目だろ、髪の毛洗ってもあーいうの生理的に受けつけねぇって女子言ってた、…しかし女子のいじめは陰険だねぇ、アレだろ?今日女子があいつの家に電話かけたらしいぜ。」
その言葉には少し顔を顰めた、何でいじめっこがいじめられっこに電話すんだよ、とそいつに聞いたら。
「今日必ず学校に来いって云ったんだと、来なきゃ家まで押しかけてやるって脅してたのを聴いたぜ?―――「女王」がね。」
「女王。」
此れは有名な渾名だ、その渾名を知らない奴は居ない。(現代社会そんな名前で呼ばれるのはいやだろうけどな。)正直馬鹿な渾名だっては思うが、この渾名が一番似合う女子生徒がこの学校にいる。渾名は俺もよく知ってはいるが、名前は俺も知らない、つーか知る必要が無い。
いじめが始まれば、必ずと云って好いほど「女王」がリーダーの可能性が大きい。
なんでかって聞かれても俺には解らない、ただ苛められて不登校になれば又誰かを苛めるの繰り返し、…この前そのこと誰かのチクりで公になって呼び出し食らって停学になったんだが、処分が終われば又そのいじめを繰り返した。
反省なんてしない、だって此れは狩りでしょー?外国の貴族だってやってたんだしー、何で私が反省するのに兎とか狩ってる貴族が反省しないのー?
……と、「女王」の言い分が俺の米神に響いた。(奴が処分終了後に廊下ででかい声で叫んでた。)
そして処分後、奴のターゲットになったのが「男子生徒」だった…。と、云うわけになる。
「しかしねぇ、あいつ「女王」に苛められてはや4週間だぜ。結構根性あるっているかなんていうか。」
「いつもは標的女だしよ、男だぜあいつ一応。根気はあるだろ。」
「あるわけネーだろ!あんなダサオタクにそんなもん。」
その言葉で俺は目を伏せた、…フォーティーズが、まぁ適当に話しているのはスルーしておき、正直俺か、それ以外の奴が訴えればこのいじめは終わるかもしれない、だけども其れをしないのは、女の場合は大体保身のため、男はめんどくさい、そして巻き込まれたら溜まったものじゃない、という理由だ。…今俺の机に相変わらず座っている奴らは、まぁある意味面白いからって意味でもあるんだろう。
―――そんな奴らに嫌悪を感じながらも、俺も何もしないのだから俺には偉そうに云う権利なんて無い。
そう思って、俺はもう一度視線を「男子生徒」へ――――……。
じい。
―――え。
じい。
――――思わず口を半開きにした。
見ている、俺を。
じいっと、
フォーティズでもなく、
俺の傍に居る奴らでもなく。
タダ俺を見ていたんだ。
その、前髪の間から見えた黒目は、
何か言いたげな、
―――目が逸らせない。
まるで催眠術に掛かったかの様で。如何しようも無いくらい首を動かせなくなっていた。今なら思い出す、TVで催眠術の特集をやっていて、「動けない~」とか「椅子から離れられなーい」と焦っているタレントを見ては鼻で笑っていた、「んなわけあるか、今回幾ら貰ってイカサマに手を貸してんだよー。」と素直な楽しみ方をせずに見ていたものだ。
―――…今はその催眠術を笑えない気分だ。
いやだ、
そんな目で見るな。
なんで、
何でイヤだって思うんだろう。
なんでだ、
嗚呼、
―――たすけ「おい!其処のフォーティズ!とっとと席に着け!!」
「やっべ、センセイもう来たのかよ。」
「センセー俺目がいいから後ろの方で勉強したいっす!」
「お前らは頭が悪いから前でじっくり勉強しろ!!200点でも平均40をキープしやがって!」
―――其れはたった、三秒間くらいだったんだ、俺は直ぐに目を逸らした。
其れは罪悪感からか、其れとも、その瞳が何かを訴えるような目だったからか。…いや、違う。アレはそんな目じゃなかったんだ。
得体の知れない感じで、俺は如何しようも無いモヤモヤを抱えながらも、恐ろしいものを見る気分で前の方の席に居る「男子生徒」を見た。
もう、此方を見ていなかった。
――――……一時間目は、世界史だ。
何時の間にか垂れていた汗を拭いながらそう思った。
きちんとPCに絵を取り込めるスキャンが欲しいです。