(仮)の世界。
絵を描いてたり日常の愚痴を綴ったり諸々。
―――…一体何が悪かったのですか。
―――其れは誰にもわかりません。
―――如何してこんな目にあわなければならないのですか。
―――其れも、誰にも解りません。
―――では貴方は何が解るのですか。
私に解る事と言えば、
ただ一つ。
もう、後戻りは出来ないことです。
―――――――
―――――――
朝。
其れは新しい日の始まりを感じるだろう。
昔の人はこの日の光が刺し、新たな時を歩むことについて如何思ったのか。
其れは実際俺には解らない、でも、
俺にとってこの日の光はある意味苦痛である。
なぜなら―――…。
「まーた、遅刻かよ。」
学校へ足を進めなくてはいけない運命と同時に、遅刻の罰則を受ける運命が決定しているからである。
現在時刻8:10
学校までの距離に掛かる時間・40分(チャリで)
到着せねばならぬ時間・8:25
あっはっはっは。
もう駄目だこりゃ。(完全に諦めモード)
つーか、何で俺は毎日毎日遅刻ギリギリに起きるんだろうなぁとベットの中(ふかふかで気持ち良くてあきらめモードを増幅させる。)に潜って携帯電話で時刻を確認しながら思った。
いや、いつもはもっと早い時刻に起きて、なんとか遅刻をギリギリでかわすんだが。(この奇跡をトモダチの中ではよく「モーゼの十戒みたいに信じられないね。」と云ってくれる、なんだその例えは、そしてモーゼって誰。)
まぁ、今日は無理だろ此れ、無理無理。
諦めて寝るか、
其れが一番いい。
其れに科学的にも、寝る子はよく育つって云うしね(ハート)
じゃ、
おやすみ――――……。
とんとん。
…。(現在俺の睡眠度レヴェルは30%)
とんとんとん。
……寝るから静かにしてくれよ、(レヴェル70%)
もう俺は寝るんだ、例え今外でノックをしているのが借金取り(借金無いけど)であろうが先生(遅刻常習者候補だから少し可能性はあるが。)であろうが、なんであろうが―――。
「―――凛くん?」
その声を聞いた瞬間、俺の中で興奮を促す脳内神経が爆発的に動き、俺を眠りに誘う為に身体を包み込んでいた鉄の様に重かった毛布がまるで羽毛の様に(羽毛布団だけど。)感じられ、俺は容易に片手一本で吹き飛ばすことが出来た、そして吹き飛ばした瞬間俺の視線の先に見える箪笥にベットから飛び蹴りを食らわせ箪笥の戸をぶち開ける。(バギィッ!と音を立てて、壊れてしまったがまぁ今は全然問題にならない、一ヶ月前に祖母に買ってもらったものだけどあんまり問題ない。)そして開けた(壊した)戸を投げ捨て箪笥の中に仕舞ってある衣服を取り出し素早い手つきで制服に着替え(え?寝巻きはどうした?そんなの俺の爆発的なオーラで既に吹っ飛んでるに決まってんだろ。)――――…。
とんとん?
「凛君、どうしたの?さっきすごい音が聞こえてきたけど。」
いや、問題ない!て叫ぼうとしたけど其の前に俺は口の中にモンダミン(歯磨きの出来ない日用)を含んでいて返事が出来なかったんだ。(だって口臭いのは男として如何だよ、煙草の匂いはハードボイルドな感じがして良いかもしれないけど俺は煙草吸わない。あとワンルームマンションの為直ぐ近くに台所がある、そして台所で歯を磨いています。)
「もしかしてオナラ?」
でけぇよ!!!
何でそういう思想に行くんだろうこの子はと常々思ってしまう。
「あ、大丈夫だよ、凛君、生理現象だもん。私解ってるから。」
全然解ってないのが悲しいよ。でもいいんだ、君にならわかってもらえるのは(違うけど)嬉しいからね!
「でも大変だね凛君、あんなに大きい音がするなら周囲の人に気遣うのは。」
いや違うんだけどね、
ていうかあんなデカイオナラは凄い威力で噴出しそうで俺のケツの危機じゃなかろうか。(確実に裂けてる。)
そしてモンダミンを吐き出し今日の朝食は学校で食べるとして昨日から既に用意していた荷物(といっても大体の勉強道具は此処には無い、皆学校である、そして学生の殆どはもって帰らないのである。)を持ち、よし、準備は完了――――!!!
扉に、いや、格好付けるなら(しなくていいんだけどな。)
彼女という天使の待つ、
HEVENs DOORのノブに手を掛けた―――……。
ごめん、格好付けて英語使った後って結構恥ずかしいな。
きぃぃ―――……。
「おはよう、凛君。」
其処に立っている彼女は、何時も俺に向けてくれる(いや、実はクラスメイト全員なんだけどね。)
天使の微笑で挨拶をした―――……。
月子、俺のクラスメイト。中学の時からの知り合いで、そして俺がひそかに淡い恋心を抱いている相手でもある――…。
「そういやさ、この時間帯に此処に居るってことは…月子ちゃんも遅刻なんじゃ…。」
「大丈夫よ凛君、凛君の奇跡なら間に合うものきっと。」
「いや其れをあてにしてるの月子ちゃん!?あんなフォーティーズ(此れはテストの点数平均40点の仲間で構成されたグループである。)の云ってる事無視していいのに!」
「え、だって奇跡があるから凛君、私との待ち合わせに遅れてたんでしょう?」
………。
~昨日の夜。~
「もしもし月子ちゃん?」
『あ、凛君如何したの?』
「いや、明日一緒に学校に行かないかなって、思って…。」
『本当?うん、解ったわ。明日何時に何処で待ち合わせ?』
「えーっと、七時には俺が迎えに行くよ!」
『本当?解ったわ、凛君明日遅刻しちゃだめだよ?』
「大丈夫大丈夫!俺には奇跡があるからさ―――…(ふっ。)」
『ふふ。』
~回想終了~
「………あ。」
「?」
―――俺、
最低男じゃねぇかぁぁぁあああああああ!!!!!!!!(忘れてた。)
学校、SHR終了後。
「「「ぶはははははははは!!」」」
「そんなに笑うことかよ!」
俺は拗ねた声でこのフォーティズ(つーか、俺もこの内の一人なんだよね。)に抗議する、俺は自分の椅子に座り込み、背もたれに全体重を掛ける。他のメンバーは何故か俺の机の上に座っていた。(三人。)
…そういや、俺のことを教えるの忘れてた。
俺の名前は笠木 凛(かさぎ りん)
雌みたいな名前だけど雄です、性欲あります、女の子大好きです。
なのにこの名前で雌に勘違いされます、男子生徒に雌扱いされてキレてそいつの頭皮を掴んで引きずり回したことはとても有名なお話です。(そしてフォーティーズの仲間の一人がその被害者です。)
…そして今親の都合(離婚とかいろいろの問題。)で一人暮らしさせられてます。
まぁ、苦痛じゃないんだけどな。
…誰の所為でもないし。
「だってよ、普通好きな女との約束忘れるか?俺なら無いね。」
「だから!寝る前にゲームしてて疲れたんだよ!」
「だからって忘れるもんかね!」
一人が呆れて肩を大げさに竦めて、声の溜息を出す。なんだよ、俺と同じ脳タリンの癖に彼女持ちめ!(あまり関係ない。)プレイボーイめ!性病掛かっちまえ。(呪っとく。)
「まず目覚めたときに気づくもんだよ、んなもん。」
んなことは解ってるんだが、と、呟けば誰かが笑いながらこう告げる。
「此れだから童貞は考えの斜め上を行くな。」
「だーかーら!俺だって如何してそんな大切なこと忘れたのか解らないんだよ…って誰だ!今俺が童貞云々関係ないだろ!?誰だ今云ったの!!」
「「「「さあ?」」」
こいつらは無駄なところで息がぴったりだ。先生の血管を(主に成績面で)ブチ切れさせる程に。
「まぁ兎に角お前の奇跡が起こって又遅刻ギリギリで間に合ったんだろ?」
「お前空でも飛んでるのかよ。」
「それともあのママチャリに仕掛けでもあんのか?」
「ロケットブースター?」
無い、そんなもんは無い!!
と否定した時に一時間目のチャイムが鳴った。一時間目は移動じゃないから俺もこいつらも移動はしない、しかし別のコースの奴ら(進路によって、A,B、C、Dに分断される、俺はD。このクラスが全員揃うのはSHRやLHRの時、あとは特別授業くらいで、普通授業はコースに分かれて授業を受ける。)は次々に教室から出て行った、……月子ちゃんは別クラスだ。(凄いしょんぼり、この時この瞬間俺は勉強を頑張ったほうが良かったと心底後悔する。俺のコースは主に専門、短大、其れか就職専門である、月子ちゃんは国立専門。)
「―――まだ、あいつ学校に来てるんだな。」
フォーティズの一人が呟いた。
その言葉に一斉、ある一人の男子生徒に顔を向けた。
顔を向けた方向に居るのは、まぁ、見た感じで「オタク」だって判断できる奴だ。筋肉とはかけ離れた、脂肪の沢山詰まってそうな腹、サイズが小さかったのかはち切れんばかりに伸びた制服、ギリギリで制服の前を止めるボタン。洗ってなさそうなオイリーな髪の毛。背が平均男子より少し低く、(俺も人のことは言えないが、)声もぼそぼそとしてて聞こえ難い……。
この、名前も知らない男子生徒は有名だ、
―――苛めを受けてるって点で。
「この前は、女子生徒に上履き隠されてたよな。」
「二日前ぐらいだろ其れ、上履きは女子トイレに捨ててあったらしいぜ。」
あの「男子生徒」に聞こえないように、俺たちはその「男子生徒」が教室の隅の方にある席に着席するのを見ていた。「男子生徒」の顔はよく見えない、ずるずると伸ばされた不潔な前髪で顔がよく見えないからだ。
「しかし、あーいう格好の奴が未だ高校生で居るとは思わなかったよ、俺も。」
「せめて髪洗えば苛めに受けるとかねぇんじゃね?」
「あー、駄目だろ、髪の毛洗ってもあーいうの生理的に受けつけねぇって女子言ってた、…しかし女子のいじめは陰険だねぇ、アレだろ?今日女子があいつの家に電話かけたらしいぜ。」
その言葉には少し顔を顰めた、何でいじめっこがいじめられっこに電話すんだよ、とそいつに聞いたら。
「今日必ず学校に来いって云ったんだと、来なきゃ家まで押しかけてやるって脅してたのを聴いたぜ?―――「女王」がね。」
「女王。」
此れは有名な渾名だ、その渾名を知らない奴は居ない。(現代社会そんな名前で呼ばれるのはいやだろうけどな。)正直馬鹿な渾名だっては思うが、この渾名が一番似合う女子生徒がこの学校にいる。渾名は俺もよく知ってはいるが、名前は俺も知らない、つーか知る必要が無い。
いじめが始まれば、必ずと云って好いほど「女王」がリーダーの可能性が大きい。
なんでかって聞かれても俺には解らない、ただ苛められて不登校になれば又誰かを苛めるの繰り返し、…この前そのこと誰かのチクりで公になって呼び出し食らって停学になったんだが、処分が終われば又そのいじめを繰り返した。
反省なんてしない、だって此れは狩りでしょー?外国の貴族だってやってたんだしー、何で私が反省するのに兎とか狩ってる貴族が反省しないのー?
……と、「女王」の言い分が俺の米神に響いた。(奴が処分終了後に廊下ででかい声で叫んでた。)
そして処分後、奴のターゲットになったのが「男子生徒」だった…。と、云うわけになる。
「しかしねぇ、あいつ「女王」に苛められてはや4週間だぜ。結構根性あるっているかなんていうか。」
「いつもは標的女だしよ、男だぜあいつ一応。根気はあるだろ。」
「あるわけネーだろ!あんなダサオタクにそんなもん。」
その言葉で俺は目を伏せた、…フォーティーズが、まぁ適当に話しているのはスルーしておき、正直俺か、それ以外の奴が訴えればこのいじめは終わるかもしれない、だけども其れをしないのは、女の場合は大体保身のため、男はめんどくさい、そして巻き込まれたら溜まったものじゃない、という理由だ。…今俺の机に相変わらず座っている奴らは、まぁある意味面白いからって意味でもあるんだろう。
―――そんな奴らに嫌悪を感じながらも、俺も何もしないのだから俺には偉そうに云う権利なんて無い。
そう思って、俺はもう一度視線を「男子生徒」へ――――……。
じい。
―――え。
じい。
――――思わず口を半開きにした。
見ている、俺を。
じいっと、
フォーティズでもなく、
俺の傍に居る奴らでもなく。
タダ俺を見ていたんだ。
その、前髪の間から見えた黒目は、
何か言いたげな、
―――目が逸らせない。
まるで催眠術に掛かったかの様で。如何しようも無いくらい首を動かせなくなっていた。今なら思い出す、TVで催眠術の特集をやっていて、「動けない~」とか「椅子から離れられなーい」と焦っているタレントを見ては鼻で笑っていた、「んなわけあるか、今回幾ら貰ってイカサマに手を貸してんだよー。」と素直な楽しみ方をせずに見ていたものだ。
―――…今はその催眠術を笑えない気分だ。
いやだ、
そんな目で見るな。
なんで、
何でイヤだって思うんだろう。
なんでだ、
嗚呼、
―――たすけ「おい!其処のフォーティズ!とっとと席に着け!!」
「やっべ、センセイもう来たのかよ。」
「センセー俺目がいいから後ろの方で勉強したいっす!」
「お前らは頭が悪いから前でじっくり勉強しろ!!200点でも平均40をキープしやがって!」
―――其れはたった、三秒間くらいだったんだ、俺は直ぐに目を逸らした。
其れは罪悪感からか、其れとも、その瞳が何かを訴えるような目だったからか。…いや、違う。アレはそんな目じゃなかったんだ。
得体の知れない感じで、俺は如何しようも無いモヤモヤを抱えながらも、恐ろしいものを見る気分で前の方の席に居る「男子生徒」を見た。
もう、此方を見ていなかった。
――――……一時間目は、世界史だ。
何時の間にか垂れていた汗を拭いながらそう思った。
きちんとPCに絵を取り込めるスキャンが欲しいです。